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1.

3つのプロゲストーゲン、髄膜腫の新たなリスク因子に/BMJ

 高用量プロゲストーゲン(nomegestrol acetate、クロルマジノン、cyproterone acetate)は、頭蓋内髄膜腫のリスク因子として知られているが、他の多くのプロゲストーゲンのリスクの評価はなされていなかった。French National HealthのNoemie Roland氏らは、今回、新たにmedrogestone、メドロキシプロゲステロン酢酸エステル、promegestoneの長期使用が髄膜腫の過剰なリスクと関連し、プロゲステロン、ジドロゲステロン、子宮内レボノルゲストレル放出システムにはリスクの上昇はみられず安全であることを示した。研究の成果は、BMJ誌2024年3月27日号に掲載された。フランス在住女性の症例対照研究 研究グループは、フランスにおける8種のプロゲストーゲンの使用に関連した頭蓋内髄膜腫のリスクを評価する目的で、全国的な症例対照研究を行った(French National Health Insurance Fund[Cnam]などの助成を受けた)。 症例は、2009年1月1日~2018年12月31日に髄膜腫に対する頭蓋内手術を受けたフランス在住の女性1万8,061例であった。各症例と出生年および居住地域をマッチさせた女性5例ずつを対照とした(合計9万305例)。 全体の平均年齢は57.6(SD 12.8)歳、最も多い年齢層は45~54歳(26.7%)で、次いで55~64歳(26.4%)、65~74歳(21.5%)の順であった。短期使用では差がない medrogestone(5mg、経口薬)の現使用者は、非使用者に比べ髄膜腫の発生率が高かった(症例群0.2% vs.対照群0.1%、オッズ比[OR]:3.49、95%信頼区間[CI]:2.38~5.10)。また、メドロキシプロゲステロン酢酸エステル(150mg、注射薬)(0.05% vs.0.01%、5.55、2.27~13.56)、およびpromegestone(0.125/0.5mg、経口薬)(0.5% vs.0.2%、2.39、1.85~3.09)の現使用者も、髄膜腫のリスクが増加していた。 これら3剤による髄膜腫のリスク上昇は、いずれも長期(1年以上)の使用によるものであり、短期使用では両群に差を認めなかった。 一方、プロゲステロン(皮下)(症例群0.5% vs.対照群0.6%、OR:1.11、95%CI:0.89~1.40)、ジドロゲステロン(0.9% vs.1.1%、0.96、0.81~1.14)、子宮内レボノルゲストレル放出システム(52mg:3.7% vs.5.1%[OR:0.94、95%CI:0.86~1.04]、13.5mg:0.2% vs.0.2%[1.39、0.70~2.77])の3剤については、髄膜腫のリスク上昇はないことを確認した。陽性対照の3剤は高度なリスク上昇 ジエノゲストとヒドロキシプロゲステロンは、これらの投与を受けた人数が少なかったため、結論は得られなかった。 陽性対照としたcyproterone acetate(症例群4.9% vs.対照群 0.3%、OR:19.21、95%CI:16.61~22.22)、nomegestrol acetate(5.1% vs.1.2%、4.93、4.50~5.41)、酢酸クロルマジノン(3.5% vs.1.0%、3.87、3.48~4.30)は、いずれも髄膜腫の高度なリスク上昇を示した。 著者は、「とくに、広く使用されている避妊薬であるメドロキシプロゲステロン酢酸エステル注射薬の使用に関連したリスクの増加と、子宮内レボノルゲストレル放出システムの安全性を確認したことは、重要な新知見である」としている。

2.

カフェインは片頭痛を引き起こすのか

 カフェイン摂取は、片頭痛の要因であると考えられており、臨床医は、片頭痛患者に対しカフェイン摂取を避けるよう指導することがある。しかし、この関連性を評価した研究は、これまでほとんどなかった。習慣的なカフェイン摂取と頭痛の頻度、持続時間、強さとの関係を調査するため、米国・Albany Medical CollegeのMaggie R. Mittleman氏らは、発作性片頭痛成人患者を対象としたプロスペクティブコホート研究を実施した。Headache誌オンライン版2024年2月6日号の報告。 2016年3月~2017年8月に発作性片頭痛と診断された成人患者101例を対象に、カフェイン入り飲料の摂取に関する情報を含むベースラインアンケートを実施した。対象患者は、頭痛の発症、持続時間、痛みの強さ(スケール:0~100)に関する情報を1日2回、6週間、電子的日誌で報告した。年齢、性別、経口避妊薬の使用で調整した後、ベースライン時の習慣的なカフェイン摂取と6週間の頭痛との関連を評価した。 主な結果は以下のとおり。・データ収集が完了した対象患者は97例。・調整後の平均頭痛日数は、習慣的なカフェイン摂取のない患者20例、カフェイン摂取1~2回/日の患者65例、カフェイン摂取3~4回/日の患者12例で同様であった。【習慣的なカフェイン摂取のない患者】7.1日、95%信頼区間(CI):5.1~9.2【カフェイン摂取1~2回/日の患者】7.4日、95%CI:6.1~8.7【カフェイン摂取3~4回/日の患者】5.9日、95%CI:3.3~8.4・推定値は不正確であったものの、平均頭痛継続時間、痛みの強さにおいても、カフェイン摂取レベルによる差は認められなかった。●平均頭痛継続時間【習慣的なカフェイン摂取のない患者】8.6時間、95%CI:3.8~13.3【カフェイン摂取1~2回/日の患者】8.5時間、95%CI:5.5~11.5【カフェイン摂取3~4回/日の患者】8.8時間、95%CI:2.3~14.9●痛みの強さ【習慣的なカフェイン摂取のない患者】43.8:95%CI、37.0~50.5【カフェイン摂取1~2回/日の患者】43.1:95%CI、38.9~47.4【カフェイン摂取3~4回/日の患者】46.5:95%CI、37.8~55.3 著者らは「本研究では、習慣的なカフェイン摂取と頭痛の頻度、持続時間、痛みの強さとの関連は認められなかったことから、発作性片頭痛患者に対するカフェイン摂取制限は推奨されない」としながらも、「通常のカフェイン摂取量から逸脱した場合、片頭痛発作が引き起こされるかどうかを明らかにするためにも、さらなる研究が求められる」としている。

3.

低炭水化物ダイエット、肉食だと効果が続かない?

 低炭水化物ダイエットの体重に対する影響は一律ではないことが報告された。炭水化物を減らした分のエネルギーを植物性食品主体に置き換えて摂取した場合は減量効果が長期間続く一方、動物性食品に置き換えて摂取した場合は時間の経過とともに体重が増加に転じやすいという。米ハーバード大学T. H.チャン公衆衛生大学院のBinkai Liu氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に12月27日掲載された。論文の筆頭著者であるLiu氏は、「われわれの研究では、炭水化物を摂取すべきか摂取すべきでないかという単純な疑問の範囲を超え、食事の内容の違いが数週間や数カ月ではなく数年間にわたって、健康にどのような影響を与える可能性があるかを検討した」と述べている。 この研究は、米国で医療従事者を対象に現在も行われている、3件の大規模前向きコホート研究のデータを用いて行われた。一つは30~55歳の看護師を対象とする「Nurses' Health Study;NHS」で、別の一つは25~42歳の看護師対象の「NHS II」であり、残りの一つは男性医療従事者対象の「Health Professionals Follow-up Study;HPFS」。65歳以上や糖尿病などの慢性疾患罹患者を除外し、計12万3,332人(平均年齢45.0±9.7歳、女性83.8%)を解析対象とした。 食習慣は後述の5種類の指標で評価した。研究参加者は4年ごとにこれらのスコアが評価され、そのスコアと4年間での体重変化との関連が検討された。解析に際しては、結果に影響を及ぼし得る因子(年齢、人種/民族、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、高血圧・高コレステロール血症の既往、摂取エネルギー量、糖尿病の家族歴、経口避妊薬の使用、閉経後のホルモン療法の施行など)を調整した。 全体的な炭水化物摂取量が少ないことを表すスコア(total low-carbohydrate diet)のプラスの変化(炭水化物摂取量がより少なくなること)は、体重の増加と関連していた(傾向性P<0.0001)。動物性食品からのタンパク質や脂質が多いことを表すスコア(animal-based LCD)のプラスの変化も体重の増加と関連していた(傾向性P<0.0001)。植物性食品からのタンパク質や脂質が多いことを表すスコア(vegetable-based LCD)の変化と体重変化との関連は非有意だった(傾向性P=0.16)。炭水化物は精製度の低いものとして、植物性食品からのタンパク質や健康的な脂質が多いことを表すスコア(healthy LCD)のプラスの変化は、体重の減少と関連していた(傾向性P<0.0001)。全粒穀物などの健康的な炭水化物の摂取が少なく、動物性食品からのタンパク質や脂質が多いことを表すスコア(unhealthy LCD)のプラスの変化は、体重の増加と関連していた(傾向性P<0.0001)。 サブグループ解析からは、これらの関連性は、過体重や肥満者、55歳未満、身体活動量が少ない群で、より強く認められた。論文の上席著者である同大学院のQi Sun氏は、「われわれの研究結果は、低炭水化物ダイエットをひと括りにしていたこれまでの捉え方の変更につながる知見と言えるのではないか。また、全粒穀物、果物、野菜、低脂肪乳製品などの摂取を推奨する公衆衛生対策を、より強く推進していく必要があると考えられる」と述べている。

4.

緊急避妊薬の市販化に伴い女性の救急外来受診が激減

 米食品医薬品局(FDA)が緊急避妊薬を処方箋なしで購入できる市販薬として承認したことが、米国の病院に予期せぬ好ましい「副作用」をもたらしたことが、新たな研究で報告された。緊急避妊薬の市販化により、女性の緊急避妊に関連した救急外来(ED)受診が96%も減少し、それに伴い医療費も大幅に削減されたことが明らかになったのだ。米ミシガン大学医学部産婦人科教授のErica Marsh氏らによる研究で、詳細は「JAMA Network Open」に1月26日掲載された。 24時間受診可能で高度な医療を提供するEDは、緊急避妊を必要とする女性に対し重要な役割を果たしている。米国では、緊急避妊薬は1998年に初めてFDAにより承認され、翌年には二つ目の緊急避妊薬であるPlan B(一般名レボノルゲストレル)が承認された。その後、2006年には単回投与版のレボノルゲストレル(Plan B One-Step)が承認されるとともに、18歳以上の成人向けにPlan Bの市販が、2013年にはPlan B One-Stepの未成年に対する市販が承認された。さらに、2012年には、アフォーダブルケア法(患者保護及び医療費負担適正化法、通称オバマケア)により、緊急避妊薬を保険適用とすることが義務付けられた。 この研究では、ED受診に関する2006年から2020年の全国データを用いて、15歳から44歳の女性による緊急避妊に関連したED受診が、上述のFDAの承認に伴いどのように変化したかが調査された。 その結果、この期間に総計4万7,858件の緊急避妊関連のED受診が発生していたが、受診件数は年を追うごとに減少する傾向にあることが明らかになった。具体的には、緊急避妊関連のED受診件数は、2006年には1万7,019件だったのが2020年には659件と96%も減少していた。このようなED受診件数の減少に伴い、緊急避妊関連の医療費も、2006年の720万ドル(1ドル146円換算で10兆5120万円)から2020年には38万5,946ドル(同5634万8,116円)へと95%削減されていた。 また、米国北東部の病院では、緊急避妊関連以外のED受診については米国全体での受診の17.1〜19.1%を占める程度だったが、緊急避妊関連のED受診については米国全体での受診の43.9〜58.6%を占めていた。一方、南部の病院では、前者が41.0〜42.6%を占めていたのに対して、後者はわずか4.5〜17.4%を占めるに過ぎなかった。 さらに、緊急避妊関連でEDを受診した女性には、年齢が若い、黒人またはヒスパニック系、メディケイド加入者などの特徴があることも判明した。Marsh氏は、「緊急避妊のためにEDを受診する人は、特定の人口統計学的属性を有する人に偏っていることが明らかになった」と指摘。「これは、一部の人では、緊急避妊薬を入手する上で障壁が依然として存在することや、性的暴行などの理由によるED受診が増加していることを示唆した、外来患者を対象にした過去の調査結果と一致している」と話す。 Marsh氏は、「われわれが得た分析結果は、市販の緊急避妊薬の入手に格差が存在することを示唆するものだ。一部の人々の前に立ちはだかる障壁を取り除き、安全な緊急避妊薬を全ての人が手頃な価格で入手できるようにする政策を講じる必要がある」と述べている。

5.

米国皮膚科学会がにきび治療ガイドラインを改訂

 米国皮膚科学会(AAD)が、2016年以来、改訂されていなかった尋常性ざ瘡(にきび)の治療ガイドラインを改訂し、「Journal of the American Academy of Dermatology(JAAD)」1月号に公表した。本ガイドラインの上席著者で、AADの尋常性ざ瘡ガイドラインワークグループの共同議長を務める米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院皮膚科のJohn Barbieri氏は、「今回のガイドラインには、新しい外用治療薬と経口治療薬に関する内容が含まれている」と述べている。 このガイドラインは、新たに実施したシステマティックレビューの結果を踏まえて2016年のガイドラインを改訂したもの。その主な内容として、エビデンスに基づく18項目の推奨事項と、にきびの管理に有益と考えられる実践(グッドプラクティス)に関する5つの声明が提示されている。 18項目の推奨事項のうち、「強い推奨」とされたのは7項目あり、その内容は以下の4点にまとめられる。・皮膚上のアクネ菌を抑制する効果がある外用過酸化ベンゾイルの使用。・毛穴の詰まりを改善し、炎症を軽減するためのアダパレン、トレチノイン、タザロテン、トリファロテンなどの外用レチノイドの使用。・細菌と炎症レベル低減のための外用抗菌薬、またはドキシサイクリンなどの経口抗菌薬の使用。・上記の全ての薬剤を必要に応じて併用すること。 また、グッドプラクティスに関する5つの声明は、以下の通りである。・にきびの管理には、それぞれの薬剤の作用機序を考慮した併用療法が推奨される。・経口抗菌薬の使い過ぎは薬剤耐性菌の出現や抗菌薬関連の合併症発生につながり得るため、限定的な使用にとどめるべきである。・経口抗菌薬は、過酸化ベンゾイルなどの他の局所療法薬と併用することで薬剤耐性菌出現のリスクを低減させることができる。・大きいにきびや結節がある患者に対しては、炎症と痛みを早く和らげるためにコルチコステロイドの注射療法が勧められる。・上記の外用薬や経口薬が奏効しない重症患者に対しては、イソトレチノインによる治療を検討する。 最後に、AADが「条件付き」とし、ケースバイケースで医師の判断に委ねた推奨事項として、以下のものがある。・治療薬の候補には、にきびを誘発している可能性があるホルモンを標的とするクラスコテロンクリームもある。また、経口避妊薬やスピロノラクトンなどのホルモン治療薬もホルモンバランスを原因とするにきびの治療に役立つ可能性がある。・サリチル酸クリームは毛穴の詰まりを解消し、皮膚の角質を除去する効果がある。・アゼライン酸クリームは、毛穴の詰まりを解消し、細菌を死滅させ、にきび跡のシミを薄くする効果が期待できる。・経口のミノサイクリンまたはサレサイクリンは、にきびに関連する皮膚の細菌と戦い、炎症を和らげる効果が期待できる。 このほかAADは、ケミカルピーリング、レーザー、光治療器、マイクロニードルなどによるにきび治療を推奨するには、裏付けとなるエビデンスが少な過ぎると述べている。また、食習慣の改善、ビタミンや植物性製品などの代替療法を支持するエビデンスも不足しているとしている。さらに、ブロードバンド光治療、強力パルス光治療、アダパレン0.3%ゲルの使用は非推奨とされた。 Barbieri氏はAADのニュースリリースの中で、「われわれは、にきび患者の抱える懸念に取り組み、最善の治療法を決めるために努力を重ねてきた結果、これまで以上に多くの選択肢を患者に提供することができた。これと同じくらい重要なこととして、皮膚科医は、これらの治療選択肢の全てにアクセスできるようにしておくべきだ」と述べている。

6.

早期閉経やホルモン補充療法は関節リウマチのリスク増加と関連

 女性は50歳未満での関節リウマチ(RA)の発症リスクが男性よりも4〜5倍高いが、この原因として、いくつかのホルモン因子が関与している可能性が新たな研究で示唆された。ホルモンや生殖に関わる因子とRAリスクとの関連を検討したところ、45歳前の早期閉経やホルモン補充療法(HRT)を受けていること、4人以上の子どもがいることなどがリスク上昇と関連していることが示されたという。安徽医科大学(中国)公共衛生学院のHai-Feng Pan氏らによるこの研究の詳細は、「RMD Open」に1月9日掲載された。 RAは、体の免疫系が関節を含む自分の組織を誤って攻撃してしまう自己免疫疾患であり、ダメージが他の臓器に及ぶこともある。RAリスクは男性よりも女性で高いことが以前から知られており、女性でのリスクは、50歳未満では男性の4〜5倍、60〜70歳では男性の2倍と推定されている。さらに、女性の方が男性よりもRAの進行速度が早く、疾患活動性も高いことも知られている。 先行研究では、このような女性でのRAリスクの増加には、女性ホルモンや、妊娠や閉経などの生殖機能に関わる因子が影響している可能性が示唆されている。しかし、具体的にどの要因がRAリスクに特に強い影響を及ぼすのかについては、明らかになっていない。 Pan氏らは、UKバイオバンク参加者の中から女性22万3,526人のホルモンや生殖に関わる因子に関するデータを抽出して、それらとRAリスクとの関連を検討した。ホルモンや生殖に関わる因子には、初経年齢、妊娠歴、子どもの数、更年期、閉経年齢、生殖期間、子宮摘出歴、卵管摘出歴、避妊薬の使用歴と使用期間、HRT歴とその治療期間を含めた。 中央値で12.39年にわたる追跡期間中に3,313人(1.5%)がRAを発症していた。交絡因子を調整して解析した結果、初経年齢が14歳超の女性は初経年齢が13歳の女性と比べてRAリスクが13%有意に高いことが明らかになった(ハザード比1.13、95%信頼区間1.02〜1.26、P=0.025)。また、閉経年齢が45歳未満の女性でも閉経年齢が50〜51歳の女性と比べてRAリスクが46%高かった(同1.46、1.27〜1.67、P<0.001)。さらに、生殖期間が33年未満の女性では38〜39年の女性と比べてRAリスクが39%高かった(同1.39、1.21〜1.59、P<0.001)。この他、RAリスクは、子どもの数が2人の女性に比べて4人以上の女性では18%、子宮摘出術や卵管摘出術を受けた女性では受けていない女性に比べてそれぞれ40%と21%高かった。また、HRTの使用歴がある女性では使用歴のない女性に比べてRAリスクが46%高いことや、HRTの使用期間が1年増えるごとにRAリスクが2%上昇することも示された。 このようにいくつかの女性ホルモンや生殖に関わる因子とRAリスクとの間に関連が認められたものの、Pan氏らは、これらの結果が因果関係を示したものではないことを強調している。それでも研究グループは、「本研究で得られた知見は重要であり、女性におけるRAリスクを抑制するためのターゲットを絞った介入策を開発するための基礎となる可能性がある」と述べている。

7.

緊急避妊薬、新年直後に販売数が増加/BMJ

 米国のドラッグストアや量販店で、レボノルゲストレル緊急避妊薬の販売数について調べたところ、新年の祝日後に顕著に増加することが、米国・テキサス工科大学のBrandon Wagner氏らが行った時系列分析で示された。そのほか、バレンタインデー、セントパトリックスデー、米国の独立記念日の後にも、新年の祝日後ほどではないが増加が認められたという。結果を踏まえて著者は、「新年の祝日後の緊急避妊薬の売上増加は、この時期が他の休日と比べて、無防備な膣性交のリスクが高いことを示唆している」と述べ、「行動リスクをターゲットとした性暴力を軽減するための予防戦略と、休日前後の避妊薬へのアクセスを改善することで、無防備な膣性交のリスクを制限できる可能性がある」とまとめている。BMJ誌2023年12月20日号クリスマス特集号「ANNUAL LEAVE」掲載の報告。新年直後とそれ以外の週の販売数を比較 研究グループは自己回帰統合移動平均(ARIMA)モデルを使用した時系列分析にて、大みそか・元旦休暇後の緊急避妊薬の売上増加を推計した。2016~22年の米国の従来型(実店舗)小売店(食料品店、ドラッグストア、量販店、クラブストア、1ドルショップ、軍用アウトレット)で集めた緊急避妊薬の週単位販売データ(362件)について、新年の祝日後(6件)とそれ以外(356件)に分け、ARIMAモデルを用いた時系列分析で比較した。 主要アウトカムは、米国の生殖可能年齢の女性1,000人当たりの、レボノルゲストレル緊急避妊薬の週間販売数とした。新年直後の週、緊急避妊薬販売数は0.63/女性1,000人の増加 レボノルゲストレル緊急避妊薬の販売数は、新年祝日後に顕著に増加した(15~44歳の女性1,000人当たり0.63単位増加、95%信頼区間:0.58~0.69)。 そのほか、バレンタインデー、セントパトリックスデー、米国の独立記念日で祝日後に同増加が認められた。 同増加は15~44歳の女性1,000人当たりそれぞれ、0.31(同:0.25~0.38)、0.14(同:0.06~0.23)、0.20(同:0.11~0.29)だった。 これら以外の祝日(イースター、母の日、父の日)後に、同増加は認められなかった。

8.

緊急避妊薬の処方箋なしの試験販売が開始【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第121回

緊急避妊薬の処方箋なしの試験販売が開始11月28日より、一部薬局で緊急避妊薬を処方箋なしで販売する試験が始まります。緊急避妊薬の販売対応の大きな一歩で、私個人としてはとても急な展開に驚いています。望まない妊娠を防ぐために性交後に服用する「緊急避妊薬(アフターピル)」について、医師の処方箋なしでの試験的な薬局販売を28日から開始すると、厚生労働省が17日、発表した。業務委託を受けた日本薬剤師会が20日開始に向けて準備していたが、調整に時間がかかった。日本薬剤師会によると、各都道府県に2〜3店ずつ、全国145薬局で順次販売する。対象は16歳以上で、18歳未満は保護者の同伴が必要になる。販売価格は7千〜9千円程度。事前の電話連絡が必要で、試験販売開始時に薬局一覧を同会がウェブサイトで公表する。(2023年11月17日付 日本経済新聞)現在、いわゆる緊急避妊薬を入手するには産婦人科などの医師が発行した処方箋が必要です。オンライン診療でも処方可能ですが、避妊失敗や性暴力などによる望まない妊娠を防ぐには早急な入手・服用が必要であるため、市販化を要望する声が高まっていました。そこで、厚生労働省が長年議論を重ね、調査研究として薬局販売することを決めました。今回販売が可能となった緊急避妊薬はレボノルゲストレル(商品名:ノルレボ錠)とその後発医薬品で、性交後72時間以内に服用することで妊娠を8割程度阻止できます。試験販売の薬局は原則、以下の要件を満たすことと発表されています。(1)研修を受けた薬剤師がいる。(2)夜間や土日祝日の対応が可能。(3)近くの産婦人科などと連携できる。(4)個室があるなどプライバシーが確保できる。今回は適正な販売を確保できるかなどを調べる調査研究を目的とした試験販売ですので、この調査研究に同意した16歳以上の女性(18歳未満は保護者の同意が必要)にしか販売できません。なお、薬剤師の目の前で服薬してもらう必要がありますが、これは日本だけの要件のようです。試験販売の期間は2024年3月までで、調査結果を踏まえてスイッチOTC化して市販化が検討されるようです。実質4ヵ月間の試験販売で、しかも全国で150軒弱の薬局という非常に少ない参加ですので、販売経験が集まるかなどの問題があると思います。しかし、手軽とはとてもいえない要件ですが、緊急避妊薬を市販するうえでの課題が明確になり、1人でも多くの女性が安全にそしてできるだけ不安が少なく緊急避妊薬を服用できる時代になることが望まれます。

9.

女性統合失調症に対する治療~エビデンスに基づく推奨事項

 性差は、抗精神病薬の有効性や忍容性に大きな影響を及ぼすことが示唆されているにもかかわらず、現在の統合失調症スペクトラム障害(SDD)の治療ガイドラインでは、男女間の区別は行われていない。オランダ・フローニンゲン大学のBodyl A. Brand氏らは、女性に対する薬物療法の改善に寄与する可能性のある戦略について、入手可能なエビデンスを要約し、女性統合失調症患者の治療を最適化するためのエビデンスに基づいた推奨事項を報告した。Current Psychiatry Reports誌オンライン版2023年10月21日号の報告。 次の3つのトピックスに関する査読済みの研究をPubMed、Embaseよりシステマティックに検索した。トピックスは、(1)用量調節した抗精神病薬の血中濃度に関する性差、(2)症状の重症度を改善するためのエストロゲンおよびエストロゲン様化合物によるホルモン増強療法、(3)抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症を軽減するための戦略とした。 主な結果は以下のとおり。・データベース研究3件、ランダム化比較試験(RCT)1件に基づくと、ほとんどの抗精神病薬は、男性と比較し、女性において用量調節濃度が高かった。・クエチアピンは、とくに高齢女性で高濃度であった。・最近の2つのメタ解析に基づくと、エストロゲンおよびラロキシフェンにおいて全体的な症状改善が認められた。・閉経後女性におけるラロキシフェン増強療法に関する最も一貫した所見が確認された。・症状に対するエストロゲン性避妊薬の効果を評価した研究は見当たらなかった。・メタ解析2件、RCT1件に基づくと、抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症を軽減するための研究として、アリピプラゾール補助療法が最も研究されており、最も安全な戦略であることが示唆された。 女性SSDに対する薬物療法について、エビデンスに基づく推奨事項は次のとおりであった。 (1)治療薬のモニタリングに基づく女性特有の抗精神病薬の投与量 (2)閉経後の女性におけるラロキシフェンによるホルモン増強療法 (3)抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症に際するアリピプラゾール補助療法 著者らは「これらの戦略を組み合わせることで、女性SSD患者の副作用を軽減し、アウトカムを改善できる可能性がある」とし、「これらの効果を今後の縦断的RCTで明らかにしていく必要がある」とまとめている。

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第172回 働き方改革で救急医療は医師不足に、厚生労働省に提言/救急医学会

<先週の動き>1.働き方改革で救急医療は医師不足に、厚生労働省に提言/救急医学会2.賃上げか負担軽減か、診療報酬改定を巡って議論が白熱/中医協3.医療機能情報提供制度の見直し、スマホ対応と多言語サポート/厚労省4.健康リスクに配慮した「飲酒ガイドライン案」を発表/厚労省5.薬のネット販売全面解禁へ、2025年から規制緩和/厚労省6.医師確保プログラム「842万円の違約金は違法」とNPOが提訴/山梨県1.働き方改革で救急医療は医師不足に、厚生労働省に提言/救急医学会日本救急医学会は、医師の働き方改革に伴う救急医療の人材不足とその対策に関する要望書を厚生労働大臣に提出した。来年度から始まる「働き方改革」では、勤務医に対して労働基準法に基づく休日や時間外労働の上限規定が適用されることになっており、救急医療に従事する医師が不足し、医療体制の維持が困難になる恐れがあると指摘している。同学会は、日本の救急医療が医療者の自己犠牲により支えられてきたと述べ、働き方改革による医師不足を解消するためには、診療報酬の改定などの支援が必要だと訴えている。また、地元の医師会との連携を強化し、救急の専門医を地域の拠点病院に集約することで、効率的な救急医療体制の構築を求めている。一方、NPO法人「EMアライアンス」による調査では、救急医の約1割が深刻な燃え尽き症候群に陥っていることが明らかになった。この調査結果では、救急医療の心理的ストレスの高さと、医師の健康問題に注目が集まった。とくに若手医師や睡眠不足を抱える医師にとって、救命救急センターでの勤務が、燃え尽き症候群と高い関連性を持つことが指摘されている。救急医療の質と持続可能性を確保するためには、医師の働き方改革を通して医師の健康にも配慮する必要がある。提言では、救急医療の現場で働く医師の声を反映した、包括的な対策が必要であると指摘している。参考1)地域救急医療への影響を鑑みた医師の働き方改革に関する提言(日本救急医学会)2)医師の働き方改革 日本救急医学会が支援求める要望書提出(NHK)3)救急医の1割、深刻な燃え尽き症候群か 睡眠不足も関連?NPO調査(朝日新聞)4)1割が深刻な燃え尽き症候群とのデータも 救急医の激務、解決策は?(同)2.賃上げか負担軽減か、診療報酬改定を巡って議論が白熱/中医協厚生労働省は、11月24日に開いた中央社会保険医療協議会(中医協)の総会において、昨年度の医療経済実態調査の結果を明らかにした。その結果、病床数が20床以上の一般病院は、物価高騰の影響で経営が悪化していたが、新型コロナ患者の受け入れに対する国の補助金を含めると、収支は黒字に転じていた。具体的には、一般病院の収支は平均で2億2,424万円の赤字であったが、補助金を含めると4,760万円の黒字となっていた。国公立病院は、平均で7億8,135万円の赤字で、補助金を含めても赤字だが、医療法人が経営する民間病院は補助金を含めると6,399万円の黒字に転じていた。一方、病床が19床以下の一般診療所は、補助金を除いても医療法人が経営する診療所で1,578万円、個人経営の診療所では3,070万円と、いずれも黒字。厚労省は、とくに一般病院の収益が厳しい結果となったことを指摘し、今年度はさらに利益率が悪化している可能性を述べている。日本医師会などは、医療職や介護職員の賃上げが必要だとして「本体」部分の引き上げを求めているが、財務省は保険料負担の軽減を目指し、逆に引き下げを主張している。武見 敬三厚生労働大臣は、新型コロナが「5類」に分類され、補助金や診療報酬の加算措置が大きく見直されていることに言及し、年末に向けて医療機関の経営状況を踏まえ、賃上げや物価高騰、感染症対策などの新たな課題に対応できる診療報酬改定に努力する意向を示している。参考1)第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告(厚労省)2)来年度の診療報酬改定 年内決定に向け 議論活発化へ(NHK)3)「一般病院」昨年度収支 黒字 コロナ患者受け入れ補助金含めて(同)4)一般病院・診療所、コロナ補助で黒字 22年度厚労省調査(日経新聞)3.医療機能情報提供制度の見直し、スマホ対応と多言語サポート/厚労省厚生労働省は、患者が適切な医療機関を選択できるよう支援する「医療機能情報提供制度」を見直すため、11月20日に「医療機能情報提供制度・医療広告等に関する分科会」を開催した。現在、各都道府県ごとに情報提供されている医療情報ネットが刷新され、2024年4月からは全国統一システムの運用を開始されることが明らかとなった。また、かかりつけ医機能を含め、国民・患者の医療機関の適切な選択を支援するよう、スマートフォン対応も予定されている。新しいシステムでは、医療機関の基本情報や医療サービス内容、治療結果のほか、高齢者や障害者向けの情報も提供される。さらに、英語・中国語・韓国語での情報提供も行われ、用語解説も整備される予定。医療機関は、毎年1~3月に定期報告を行い、基本情報に変更があった場合は都道府県に報告することが求められる。また、「かかりつけ医機能」の情報も提供され、患者は自宅近くの医療機関を選択しやすくなる。全国統一システムへの移行により、情報提供の内容も新しくなり、利用者がより使いやすい仕組みが提供されることが期待されているほか、2025(令和7)年度から発足するかかりつけ医機能が発揮される制度の施行に向けて、今後も情報提供項目改修が行われていく見込み。参考1)医療機能情報提供制度(医療情報ネット)について(厚労省)2)国民・患者に対するかかりつけ医機能をはじめとする医療情報の提供等に関する検討について(同)3)医療情報ネット、来年1月から新たな報告に 全国統一の情報提供4月開始、スマホ対応(CB News)4)医療情報ネットを「より使いやすい仕組み」に2024年度リニューアル、今後「かかりつけ医機能」情報も充実-医療機能情報提供制度等分科会(Gem Med)4.健康リスクに配慮した「飲酒ガイドライン案」を発表/厚労省11月22日に厚生労働省は、アルコール健康障害対策基本法に基づいて、検討を重ねてきた「飲酒ガイドライン案」を発表し、飲酒に伴うリスクに関する知識の普及と健康障害の防止を目指すことを明らかにした。指針は、年齢や体質に応じた飲酒量の留意点を提案し、純アルコール量での飲酒管理を重視している。とくに高齢者や若年層、アルコール分解能力が低い人々には、飲酒による健康リスクが高いと警告している。ガイドライン案では、純アルコール量の計算方法が示され、疾患ごとのリスクに応じて、少量の飲酒でも注意が必要としている。政府の「健康日本21(第3次)」計画では、1日の純アルコール摂取量を男性40g、女性20g以上と定め、60g以上の過度な飲酒や、不安・不眠解消のための飲酒、他人への強要を避けるよう勧めている。また、健康への配慮として、飲酒量の事前設定、飲酒時の食事摂取、水分補給、週に無酒日を設けることなどが推奨されている。そのほか、最近では、アルコール摂取量の自己管理を促進するため、スマートフォンアプリを利用した記録方法も普及している。ガイドラインに対する反応はさまざまで、個々の許容量に基づく飲酒量の調整を提案する声や、健康意識の高い人々にとって有益だとする意見があり、専門家は、多量飲酒時の水分摂取の重要性を強調し、飲み方の工夫を勧めている。参考1)健康に配慮した飲酒に関するガイドライン(案)(厚労省)2)国内初の飲酒ガイドライン案「男性40g、女性20g以上はリスク」(毎日新聞)3)国として初の飲酒ガイドライン案 ビール1杯で高まる大腸がんリスク(朝日新聞)4)飲酒リスク、初指針で周知 年齢や体質に応じ留意点(日経新聞)5)お酒の望ましい量は?「飲酒ガイドライン」厚労省が案まとめる(NHK)5.薬のネット販売全面解禁へ、2025年から規制緩和/厚労省厚生労働省は、薬のネット販売に関する規制を大幅に緩和する方針を固めた。これにより、ほぼすべての薬がインターネットで購入可能になる見込み。とくに「要指導医薬品」について、これまでは対面販売が義務付けられていたが、ビデオ通話による服薬指導を条件に非対面での購入が認められるようになる。この変更は2025年以降に実施される予定。市販薬のネット販売は、2014年から一部が販売可能になり、新型コロナウイルス感染症の流行を受け、さらに拡大されていた。今回の規制緩和により、市販薬のほぼすべてがネットでの購入が可能となり、患者の利便性が大幅に向上すると期待されている。ただし、緊急避妊薬など対面での情報提供が必要な薬や乱用のリスクがある薬については、20歳未満の大量購入を禁止するなどの規制が維持される。厚労省は、この方針について専門家の会議で議論し、医薬品医療機器法の改正を目指している。現在、オンライン服薬指導による安全性の確保と利便性の向上を両立させるための仕組み作りが進められている。参考1)対面販売必要な薬 薬剤師のビデオ通話でネット販売検討 厚労省(NHK)2)市販薬ネット販売、全面解禁へ ビデオ通話での指導条件(日経新聞)3)薬のネット販売全面解禁へ、利点や注意点は?(同)6.医師確保プログラム「842万円の違約金は違法」とNPOが提訴/山梨県東京のNPO法人「消費者機構日本」は、山梨県が医師不足対策として2019年に開始した医師確保プログラムについて消費者契約法に違反するとして山梨県を11月21日に提訴した。このプログラムは、医学部学生が県内の医療機関で9年間勤務することを条件に、学費の返済を免除する内容。しかし、2021年に導入された新条項では、勤務期間を満たさない場合に最大842万円の違約金を課すことになり、この違約金条項が消費者契約法に違反するとして山梨県を提訴した。NPO法人側は、学費返済だけで十分であり、違約金は不当に高額だと主張している。一方、山梨県は、違約金が必要な措置であると反論し、プログラムの早期離脱が県に追加コストをもたらすとして長崎 幸太郎山梨県知事は争う姿勢を示した。この訴訟は、地域医療の充実を目指す県側の政策と、その実施方法の法的・倫理的妥当性を巡って議論を提起しており、違約金条項導入後、山梨大学や北里大学などから約115人の学生がプログラムに参加しており、今後の訴訟の動向が注目されている。参考1)山梨県の医学部学費貸与、「違約金840万円は違法」 NPOが提訴(朝日新聞)2)医師不足解消を図る山梨県の制度 “違約金は違法”と提訴(NHK)3)山梨県の医師確保プログラム、9年間勤務できなければ最大842万円の違約金…適格消費者団体が差し止め求め提訴(読売新聞)4)医師確保事業巡り 都内の消費者団体が県を提訴 長崎知事は争う姿勢示す 山梨県(山梨放送)

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第171回 医師会長、病院団体とともに診療報酬の大幅引き上げを岸田総理に強く要求/医師会

<先週の動き>1.医師会長、病院団体とともに診療報酬の大幅引き上げを岸田総理に強く要求/医師会2.肥満症治療薬セマグルチドが薬価収載、供給不足の懸念も/中医協3.不妊治療の保険適用で医療費895億円、患者の経済負担は?/中医協4.2025年発足のかかりつけ医機能報告制度、分科会で議論開始/厚労省5.日本で緊急避妊薬の試験販売開始、医師の処方箋不要に/厚労省6.解禁前に大麻類似成分含むグミ問題が浮上、販売停止へ/厚労省1.医師会長、病院団体とともに診療報酬の大幅引き上げを岸田総理に強く要求/医師会日本医師会の松本 吉郎会長は、病院団体の代表らとともに11月15日に官邸を訪れ、岸田 文雄首相と面会し、医療現場で働く職員の賃上げを「非常に重要な事項」として診療報酬の改定での増額を求めた。この面会に先立ち、松本会長は日本病院会などからなる四病院団体協議会の幹部と記者会見を開き、2024年度の診療報酬改定に向けて大幅な引き上げを強く求める合同声明を発表した。医療業界は物価高騰や賃金上昇による経営環境の厳しさに直面しており、とくに入院基本料の引き上げを要望している。入院基本料は15年間据え置かれており、病院経営の持続可能性に影響を与えている。財務省側の診療報酬マイナス改定の求めに対して、日本病院会の島副会長は、「赤字病院が8割を超えており、診療報酬の引き下げが入院医療の質の低下につながる」と懸念を表明したほか、全日本病院協会の猪口会長は、賃上げの余裕がない現状を指摘し、財政支援の必要性を訴えた。来年の診療報酬の改定の幅は年末までに決定される見込みで、今後は厚生労働省、財務省とさらに折衝が行われる。参考1)類を見ない物価高騰「大幅な診療報酬引き上げを」日本医師会と四病協が合同で声明(CB News)2)日医・四病協が合同声明 24年度診療報酬改定「大幅引上げ強く求める」 日病「入院基本料引上げは悲願」(ミクスオンライン)3)首相「医療職賃上げ重要」 日医会長らと面会(東京新聞)4)令和6年度診療報酬改定に向けた日本医師会・四病院団体協議会合同声明(日医)2.肥満症治療薬セマグルチドが薬価収載、供給不足の懸念も/中医協厚生労働省は、11月15日に開かれた中央社会保険医療協議会(中医協)総会で、肥満症治療の新薬セマグルチド(商品名:ウゴービ)の薬価収載について了承した。肥満症の治療薬として約30年ぶりに公的医療保険の対象として承認された。セマグルチドはGLP-1受容体作動薬であり、肥満症の治療に用いる場合は、高血圧、脂質異常症、2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法や運動療法で十分な効果が得られない、特定のBMI基準を満たす患者に限定されている。ウゴービと同一成分のオゼンピック注は、すでに糖尿病治療薬として使用されており、ウゴービの薬価償還により美容・ダイエット目的での不適切な使用が増え、供給不足のため必要な患者への薬剤供給が困難となる可能性が懸念されている。厚労省や医療関係者は、GLP-1受容体作動薬の適切な使用を強く呼びかけ、不適切な使用による健康被害や供給不足の問題を防ぐための対策を求めている。また、セマグルチドの供給に関しては、製薬会社が安定供給を確保できると報告しているが、実際の供給状況や使用実態については、引き続き注視が必要。参考1)オゼンピック皮下注2mg供給(限定出荷)に関するお知らせ(ノボ ノルディスクファーマ)2)中医協総会 肥満症治療薬・ウゴービ収載で厚労省に対応求める ダイエット目的の使用で供給不安を懸念(ミクスオンライン)3)肥満症薬ウゴービ22日収載、ピーク時328億円 中医協・総会が了承(CB News)4)肥満症に30年ぶり新薬、ウゴービを保険適用へ…ダイエット目的の使用に懸念も(読売新聞)5)糖尿病治療薬は「やせ薬」? ネットで広まり品薄状態に(産経新聞)3.不妊治療の保険適用で医療費895億円、患者の経済負担は?/中医協厚生労働省は、11月17日に開かれた中央社会保険医療協議会(中医協)総会で、不妊治療を取り上げた。2022年度の診療報酬改定に合わせて、不妊治療が保険適用され、患者側や医療機関側の反応と金額について議論を行った。保険適用後の不妊治療の実施状況は、医療費895億円、レセプト件数125万件、実患者数37万人。一般不妊治療管理料は31万回、生殖補助医療管理料は合計61万回以上算定されていた。しかし、保険適用にあたって設けられた範囲や年齢・回数制限に関して、見直しを求める意見が出されたほか、凍結保存胚の維持管理期間の延長が検討された。また、不妊治療の全体像を正確に把握するために、今後も日本産婦人科学会のデータ検証が必要とされた。参考1)中央社会保険医療協議会 総会(第565回) 議事次第2)不妊治療の保険適用、昨年度の医療費895億円 対象拡大後 厚労省(朝日新聞)3)「不妊治療の保険適用」は効果をあげているが「年齢・回数制限の見直し」求める声も、凍結胚の維持管理期間を延長してはどうか-中医協総会(Gem Med)4.2025年発足のかかりつけ医機能報告制度、分科会で議論開始/厚労省2025年4月に施行される「かかりつけ医機能報告」制度に向けて、厚生労働省は「第1回 かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会」を11月15日に開き、議論を開始した。かかりつけ医機能報告制度は、慢性疾患患者や高齢者など継続的な医療が必要な人々に対して、地域での「かかりつけ医機能」を確保・強化することを目的としている。分科会では、医療機関が都道府県に報告する「かかりつけ医機能」の内容や、報告制度の対象となる医療機関の範囲などを具体化することが議題となっている。分科会では、患者が適切な受診先を選択できるように「かかりつけ医機能」をカバーする医療機関の基準設定の必要性が指摘された。このほか、地域医療機関の連携強化や患者が「かかりつけ医機能を持つ医療機関」を容易に検索できる仕組みの構築が重要であるとの意見も出された。医療提供側からは、幅広い医療機関が参加できるような仕組みへの期待を寄せる声が上がったほか、患者側と医療側で「かかりつけ医機能」に関する意識のズレも明らかとなった。今後は議論を重ね、実効性のある「かかりつけ医機能」の具体化に進め、来年の夏までに取りまとめを行い、法律改正を経て、令和7(2025)年度の発足を目指す見込み。参考1)第1回 かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会 資料(厚労省)2)「かかりつけ医機能」具体化へ分科会が初会合 プレゼン・ヒアリングでまず実態把握(CB News)3)かかりつけ報告、来年夏に取りまとめへ 厚労省分科会が初会合(MEDIFAX)5.日本で緊急避妊薬の試験販売開始、医師の処方箋不要に/厚労省厚生労働省は、緊急避妊薬(アフターピル)の試験販売が11月28日から開始されることを明らかにした。全国約145~150の薬局で、医師の処方箋なしで販売される予定。価格は7,000~9,000円で、16歳以上の女性を対象としているが、18歳未満では保護者の同伴が必要となる。緊急避妊薬は、性交後72時間以内に服用することで妊娠を高確率で回避でき、現在は、医師の処方箋が必要であり、避妊失敗や性暴力による望まない妊娠を防ぐために市販化を求める声が上がっていた。試験販売は来年3月29日までの予定で、厚労省が求める要件を満たす薬局で実施される。要件としては夜間や休日の対応、近隣の産婦人科との連携、プライバシーが確保できる個室の有無などが含まれ、購入者は研究への参加に同意する必要がある。参考1)緊急避妊に係る診療の提供体制整備に関する取組について(厚労省)2)緊急避妊薬、薬局で試験販売 28日から、全国145店舗 厚労省(時事通信)3)緊急避妊薬28日試験販売 全国145薬局、16歳以上(日経新聞)4)医師の処方箋なしで緊急避妊薬、28日から全国150薬局で試験販売…薬剤師の面前で薬を服用(読売新聞)6.解禁前に大麻類似成分含むグミ問題が浮上、販売停止へ/厚労省厚生労働省麻薬取締部は、大麻の類似成分を含むとされるグミによって体調不良を訴える人が相次いでいることを受け、東京と大阪の販売店に対して販売停止命令を出した。これらのグミは「HHCH(ヘキサヒドロカンナビヘキソール)」という未規制の成分を含んでいるとされ、武見 敬三厚生労働大臣は使用・流通の禁止を検討している。今回の事件は、東京都内や大阪市での祭りや公共の場での配布により、体調不良を訴え、病院に搬送される患者から発覚した。厚労省は、これらのグミが健康被害を引き起こす可能性があるとして、成分分析を行っている。また、CBD(カンナビジオール)を含む合法的な「CBDグミ」との混同を避けるための情報提供も行っている。販売する「ワンインチ」社の社長は、同社のCBDグミは安全であり、大麻グミとは異なると主張している。また、厚労省は、CBD製品は、大麻取締法に該当しないことを明らかにしている。大麻草から抽出した成分を用いて製造した医薬品の国内での使用解禁を含む、大麻取締法の改正案が11月14日に衆議院本会議で可決されたばかりで、武見厚労働大臣は、17日の閣議後の会見で、成分が特定されれば、「速やかに指定薬物として指定し、使用・流通を禁止する」方針を明らかにしている。参考1)大麻グミ騒動 「CBDグミ」販売元が訴え「味覚糖製造、安全」「HHCHとは大きく異なる…大変迷惑」(スポニチ)2)「グミ」店に販売停止命令 麻薬取締部、大麻類似成分(東京新聞)3)「大麻グミ」規制へ 搬送相次ぎ、厚労相「使用・流通禁止を検討」(朝日新聞)4)大麻法改正案、衆院通過 成分含む薬、使用可能に(産経新聞)

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緊急避妊薬レボノルゲストレル、ピロキシカム併用が有効/Lancet

 経口緊急避妊薬レボノルゲストレルはピロキシカムとの併用により妊娠阻止率が高まることが、中国・香港大学のRaymond Hang Wun Li氏らが実施した無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験の結果、明らかとなった。緊急避妊の標準薬であるレボノルゲストレルは排卵後に服用しても効果がない。シクロオキシナーゼ(COX)阻害薬は、排卵、受精、卵管機能、胚着床などの生殖過程を促進するプロスタグランジンの産生に関与する主要な酵素であるCOXを阻害することから、経口緊急避妊薬との併用により相乗的に作用し、排卵および排卵後の過程の両方を調節する効果を向上させる可能性が示唆されていた。著者は、「レボノルゲストレルによる緊急避妊が選択される場合には、ピロキシカムの併用を臨床的に考慮してもよいだろう」とまとめている。Lancet誌2023年9月9日号掲載の報告。レボノルゲストレル+ピロキシカムまたはプラセボ併用を比較 研究グループは香港家族計画協会を訪れ、無防備な性交の72時間以内に緊急避妊を要した18歳以上の健康な女性を、レボノルゲストレル1.5mg+ピロキシカム40mg群(ピロキシカム併用群)またはレボノルゲストレル1.5mg+プラセボ群(プラセボ群)のいずれかに1対1の割合で無作為に割り付けた。割り付けは10人単位のブロックランダム化法で行われ、すべての試験薬は不透明な封筒に入れ封をされており、参加した女性や医師などは全員盲検化された。 参加者には試験薬を試験担当看護師の目の前で1回服用してもらい、次の月経予定日の1~2週後に追跡調査を行った。それまでに正常な月経がなかった場合は、妊娠検査が行われた。 有効性の主要アウトカムは妊娠阻止率で、確立されたモデルに基づく推定予測妊娠数から観察された妊娠数を引いたものを推定予測妊娠数で除して算出した。ピロキシカム併用で妊娠阻止率が約1.5倍に 2018年8月20日~2020年8月30日に、860例(各群430例)が登録され、このうち試験薬が投与され追跡調査を完遂した836例(各群418例)が解析対象となった。 ピロキシカム併用群では418例中1例(0.2%)、プラセボ群では418例中7例(1.7%)で妊娠を認めた(オッズ比:0.20、95%信頼区間:0.02~0.91、p=0.036)。推定予測妊娠数はピロキシカム併用群19.0、プラセボ群19.1で、妊娠阻止率はそれぞれ94.7%、63.4%とピロキシカム併用群が有意に高かった(p<0.0001)。 次の月経開始日が予定日の±7日以上であった女性の割合は、ピロキシカム併用群25%、プラセボ群23%で差はなく、有害事象のプロファイルも両群で類似しており、発現率に有意差は認められなかった。

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生殖年齢女性はNSAIDでVTEリスク増、ホルモン避妊薬併用でさらに増/BMJ

 生殖年齢15~49歳の女性において、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の使用は静脈血栓塞栓症(VTE)と正の関連性があることが示された。また、NSAID非使用時と比較した使用時のイベント数は、低リスク/リスクなしのホルモン避妊薬併用時と比べて、高/中リスクのホルモン避妊薬の併用時に有意に増加したことも示された。デンマーク・コペンハーゲン大学のAmani Meaidi氏らが、同国在住の女性約203万人を対象に行った全国コホート試験の結果で、著者は「NSAIDとホルモン避妊薬の両者の使用が必要な女性には、適切なアドバイスが必要である」と述べている。BMJ誌2023年9月6日号掲載の報告。デンマーク在住の約203万人を対象にコホート試験 研究グループは、1996~2017年にデンマークに在住しており、静脈・動脈血栓症、がん、血小板増加症、子宮全摘出術、両側卵巣摘出術、不妊手術、不妊治療の病歴がない15~49歳の女性202万9,065人を対象にコホート試験を行い、ホルモン避妊薬とNSAIDの併用がVTEリスクに与える影響を検証した。 主要アウトカムは、下肢深部静脈血栓症または肺血栓塞栓症の初回退院時診断とした。ホルモン避妊薬非使用群4件/10万人、高リスクホルモン避妊薬併用群23件/10万人 202万9,065人の女性を延べ2,100万人年追跡した期間において、VTEイベントの発生は8,710件だった。 NSAID非使用者と比べ、NSAID使用者のVTEの補正後発生率比は、ホルモン避妊薬の非使用者では7.2(95%信頼区間[CI]:6.0~8.5)だったが、高リスクホルモン避妊薬使用者では11.0(9.6~12.6)、中リスクホルモン避妊薬使用者では7.9(5.9~10.6)、低リスク/リスクなしホルモン避妊薬使用者は4.5(2.6~8.1)だった。 NSAID非使用者と比較したNSAID治療開始後1週間における10万人当たりのVTEイベント発生件数は、ホルモン避妊薬非使用群では4件(95%CI:3~5)だったが、高リスクホルモン避妊薬併用群では23件(19~27)だった。中リスクホルモン避妊薬併用群は11件(7~15)、低リスク/リスクなしホルモン避妊薬併用群は3件(0~5)だった。

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米FDAが経口避妊薬の市販を承認

 米食品医薬品局(FDA)は7月13日、経口避妊薬のOpill(一般名ノルゲストレル)の市販を承認した。消費者は、黄体ホルモンであるプロゲスチン(体内で作られるプロゲステロンを人工的に合成したホルモン)のみで作られたこの経口避妊薬を、処方箋なしで、ドラッグストアやコンビニエンスストア、食料品店、オンラインで購入できるようになる。年齢による購入制限もないという。 Opillは、2024年1月または2月から店頭に並ぶことになるとワシントン・ポスト紙は報じている。希望小売価格は2023年秋に発表される予定だ。他のタイプの経口避妊薬は、引き続き、処方箋のみで入手可能である。 FDA医薬品評価研究センター(CDER)のディレクターであるPatrizia Cavazzoni氏はFDAのニュースリリースの中で、「この承認により、処方箋を必要としない初めての経口避妊薬が、米国内の何百万人もの人々にとって利用可能な選択肢となった。指示通りに使用すれば、毎日の経口避妊薬の服用は安全であり、意図しない妊娠を防ぐために現在利用できる、処方箋によらない避妊法よりも効果的だと思われる」と述べている。 米国での年間の妊娠件数は610万件だが、このうちのほぼ半数は意図しない妊娠だとされている。意図しない妊娠は、早期の妊婦健診を受ける可能性の低下や早産リスクの増加など、母親や周産期の母子の有害な転帰につながる。また、新生児期およびそれ以降の児の健康や発達過程にも悪影響を及ぼす可能性がある。Opillを処方箋不要で利用できるようになることで、意図しない妊娠の発生件数とその潜在的な悪影響を減少させられる可能性がある。 Opillは1973年に初めてFDAに承認されており、その有効性はすでに確立されている。今回の決定においてFDAは、5月に全会一致でOpillの市販薬としての販売承認を支持した諮問委員会の勧告に従った。諮問委員会の前に提出されたブリーフィング文書の中で、FDAは、人々がこの避妊薬を適切に使用できるかどうかについての懸念を示していた。承認に伴い発表されたニュースリリースでFDAは、消費者の多くがOpillのラベルに説明されている内容を理解し、市販薬を適切に使用できることが調査により裏付けられたと述べている。 Opillの効果を高めるためには、毎日同じ時間に服用する必要がある。Opillと相互作用する薬剤を使用すると、どちらかの薬剤の効果が低下するか、薬剤同士が作用して意図しない妊娠につながる可能性がある。Opillの服用により最もよく現れる副作用は、不正出血、頭痛、めまい、吐き気、食欲増進、腹痛、けいれん、腹部膨満感などである。禁忌は、乳がん患者、または乳がんの罹患歴がある人。また、乳がん以外のがんに罹患している人は、事前に医師に相談する必要がある。さらにOpillは、他の経口避妊薬、膣リング、避妊パッチ、避妊インプラント、避妊注射、IUD(子宮内避妊器具)などの他のホルモン性避妊製品と併用することはできない。 なお、Opillの承認は、2022年にペリゴ社(Perrigo Company plc)に買収されたLaboratoire HRA Pharma社に対して付与された。

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生理痛の強さと生活習慣との関連が明らかに

 朝食を欠かさずビタミンDやB12が不足しないようにすること、毎日入浴することなどが、月経痛(生理痛)の痛みを和らげてくれるかもしれない。月経痛の重い人と軽い人の生活習慣を比較したところ、それらの有意差が認められたという。順天堂大学の奈良岡佑南氏らの研究結果であり、詳細は「Healthcare」に4月30日掲載された。 日本人女性の月経痛の有病率は78.5%という報告があり、生殖年齢にある多くの女性が周期的に生じる何らかの症状に悩まされていると考えられる。月経痛は本人の生活の質(QOL)低下を来すだけでなく、近年ではそれによる労働生産性の低下も含めた経済的負担が、国内で年間6830億円に上ると試算されるなど、社会的な対策の必要性も指摘されるようになった。 これまでに、ビタミンやミネラルなどの摂取量、または食事や運動・睡眠習慣などと月経痛の強さとの関連を個別に検討した研究結果が、いくつか報告されてきている。ただし、研究対象が学生に限られている、または一部の栄養素や食品の摂取量との関連のみを調査しているといった点で、結果の一般化に限界があった。これを背景として奈良岡氏らは、就労年齢の日本人女性を対象として、摂取栄養素・食品、朝食欠食の有無、睡眠・運動・入浴習慣など、多くの生活習慣関連因子と月経痛の強さとの関連を検討する横断研究を行った。 研究参加者は、2018年5~6月に、一般社団法人Luvtelli(ラブテリ)のオンラインプラットフォームを通じて募集された511人から、年齢40歳以上、妊娠中・授乳中、何らかの疾患治療中、経口避妊薬使用、摂食障害、データ欠落などの該当者を除外し、20~39歳の健康な女性321人(平均年齢30.53±4.69歳、BMI20.67±2.62、体脂肪率27.02±5.29%)を解析対象とした。 調査項目は、月経周期や月経痛の程度、自記式の食事調査票、および、就労状況、飲酒・喫煙・運動・睡眠習慣などに関する質問で構成されていた。そのほかに、身長、体重、体組成を評価した。なお、月経痛の強さは、「寝込むほどの痛み」、「薬を服用せずにいられない」、「痛むものの生活に支障はない」、「痛みはほとんどない」の四者択一で回答してもらい、前二者を月経痛が「重い」、後二者を「軽い」と判定した。 解析対象者のうち、76.19%が月経痛を経験しており、痛みが重いと判定された人が101人、軽いと判定された人が220人だった。この2群を比較すると、年齢、BMI、体脂肪率、摂取エネルギー量は有意差がなかった。ただし、総タンパク質、動物性タンパク質、ビタミンD、ビタミンB12、魚の摂取量は、月経痛が重い群の方が有意に少なかった。反対に、砂糖、ラーメン、アイスクリームの摂取量は、月経痛が重い群の方が有意に多かった。また、朝食を欠かさない割合は、月経痛が軽い群73.6%、重い群64.4%で、後者が有意に低値だった。 栄養・食事以外の生活習慣に着目すると、毎日入浴する割合が、前記と同順に40.5%、26.7%で有意差があり、月経痛が重い人は入浴頻度が少なくシャワーで済ます人が多かった。睡眠時間や1日30分以上の運動習慣のある人の割合については有意差がなかった。 これらの結果について著者らは、以下のような考察を述べている。まず、糖質の摂取量の多さが月経痛の強さと関連していることは、先行研究と同様の結果だとしている。その一方で、欧州からは肉類の摂取量の多さは月経痛の強さと関連していると報告されており、今回の研究では異なる結果となった。この点については、日本人の肉類の摂取量が欧州に比べて少ないことが、相違の一因ではないかとしている。 このほか、ビタミンDは子宮内膜でのプロスタグランジン産生抑制、ビタミンB12はシクロオキシゲナーゼの合成阻害などの作用が報告されており、炎症抑制と疼痛緩和につながる可能性があり、魚はビタミンDとビタミンB12の良い供給源であるという。また、朝食摂取や入浴は体温を高め、血行改善や子宮収縮を抑制するように働いて月経痛を緩和する可能性があるが、本研究では体温を測定していないことから、今後の検証が必要と述べている。 論文の結論は、「日々の食事で魚、タンパク質、ビタミンB12、ビタミンDを十分に摂取し、朝食や入浴などによって体温を上げるような生活習慣とすることが、月経痛の緩和に効果的である可能性が考えられる」とまとめられている。

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英語で「避妊薬」は?【1分★医療英語】第89回

第89回 英語で「避妊薬」は?There are several methods of contraception.(いくつかの避妊方法があります)I prefer oral contraceptives.(経口避妊薬がいいです)《例文1》How effective are the contraceptive devices?(避妊具の成功率はどれくらいですか?)《例文2》Most contraceptive pills contain a combination of estrogen and progestin.(多くの避妊薬にはエストロゲンとプロゲスチンが含まれています)《解説》“contraception”(避妊)の語源は前置詞の“contra”(妨げる)と名詞の“conception”(妊娠・受胎)を合わせたものです。さらに“-ive”を付けると“contraceptives”(避妊具・避妊薬)を意味します。避妊薬は“birth control pill”とも表現します。例文にありますが、ホルモンの“estrogen”は日本語では「エストロゲン」ですが、英語の発音は「エストロジェン」(「エ」にアクセント)とかなり異なります。同様に“progestin”は「プロゲスチン」ではなく「プロジェスティン」(「ジェ」にアクセント)です。日本でもアフターピルの市販化について議論がされていますね。アフターピルは日本語と同じように“after pill”、“morning after pill”とも言いますが、“emergency contraceptive pill”(緊急避妊薬)、あるいは有名な商品名から“Plan B”(Plan B One-Stepという緊急避妊薬がある)と表現することもあります。米国の全州でアフターピルは薬局やオンラインで処方箋なしに「OTC(over-the-counter)薬」として購入できます。また、私のいるカリフォルニアでは2016年より薬剤師の権限が広がり、通常の避妊薬も薬局で薬剤師から購入できるようになりましたが、これは「BTC(behind-the-counter)薬」扱いとなっています。BTCとは言葉どおり「カウンターの後ろ」に置かれる薬剤であり、年齢や量を確認したうえでないと販売できない仕組みです。素早くアクセスできることが大事である“emergency contraception”や“immunization”(ワクチン接種)などは、日本でも薬局での販売や実施が早期に実現すればよいと思います。講師紹介

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36歳で脳卒中を体験したエクササイズインストラクター―AHAニュース

 米国人女性、Jessica Diazさんは、エクササイズ教室に通い始めてからの自分の体調の変化に驚いた。そのエクササイズは、約1kgの重りを使いながら、ヨガやピラティス、バレエなどを組み合わせた動作を行うものだった。ほかの人たちにはかなりの疲労となる運動だが、彼女はレッスン後にいつも新たな活力を感じていた。 それが変わったのは第二子を出産してからだった。妊娠中に体重が約36kg増え、そのような出産直後の体にはこのエクササイズは適していないと感じた。そこでDiazさんは減量を行い、さらには自分自身がインストラクターとなって、ボストンのスタジオやオンラインで指導するまでになった。そして約1年後には元の体重に戻り、以前にも増して健康的になっていた。そのため、ある日、クラスの指導後に起きたことは彼女にとって不可解なことだった。 Diazさんはシャワーを浴びている最中に、体の左半身に鋭い痛みを感じた。左腕に力が入らず、足はビリビリしびれた。浴槽の段差をどうにかまたいだ後、激しい頭痛に襲われた。「それまでに経験したどの片頭痛よりも、10倍ひどかった」と彼女は語る。症状が治まるのを期待して数時間安静にしていたが、改善しないため救急外来を受診した。 医師の診断は脳卒中だった。「私は当時、脳卒中は高齢者か、何かしら病気のある人にしか起こらないと思っていた。36歳でも脳卒中が起きることがあるという事実を受け入れるには時間を要した」と彼女は振り返る。いつ帰宅できるかを医師に尋ねると、リハビリ施設での入院も含めて約5週間との予測だった。夫や幼い2人の子どもが心配になり、涙があふれるのを止められなかった。 ところがすぐに状況が変わった。翌朝目覚めると、症状は消失しており、わずか4日の入院で自宅へ戻ることができた。詳しい検査の結果、Diazさんに起きた脳卒中は、彼女が生まれた時から潜んでいた二つの問題によるものの可能性が高いと判明した。問題の一つは、血栓が形成されやすくなる第V因子ライデンという遺伝子変異であり、もう一つは卵円孔開存症(PFO)だった。PFOは、通常は出生後に塞がれる心房中隔の一部が開いたままになっている状態であり、どこかに血栓が形成された場合はそれが脳に到達しやすくなる。 数カ月後、Diazさんは、メッシュを用いてPFOを閉鎖する手術を受けた。術後に医師は、メッシュが安定するまで数カ月間は激しく動き回らないようにアドバイスをした。ただし、彼女にそれを説得する必要はなかった。Diazさんは脳卒中の再発が心配で、医師のアドバイスを守らないなど思いもよらないことだった。数日後に彼女はめまいとともに頭痛と左脚の鈍痛を感じて119番通報し、救急処置室で数時間を過ごすことになった。医師の診断は、おそらく不安によるものだとのことだった。 そんなDiazさんに対して主治医のNatalia Rostさんは、彼女が以前の生活を取り戻す一助になればと思い、米国心臓協会(AHA)が行っている脳卒中サバイバーのためのイベントへの参加を勧めてみた。初めは気が進まなかったDiazさんだが、参加した結果はRostさんの思惑どおりになった。「自分以外の脳卒中体験者の話を聞いてみて、彼らと私が同じような考え方をしていることに驚かされた。そして、とても助けられた」と彼女は話す。 これをきっかけにDiazさんは、今後は自分がほかの人を助けるべきだと考えるようになり、それを使命とした。彼女は、AHA主催イベントに積極的に参加したり、募金活動を主導したり、地元のテレビやソーシャルメディアで自分の体験を語るようになった。その活動を目にした、近所に暮らす脳卒中後の女性から、アドバイスを求める電話を受けるようなこともあった。 2021年11月、Diazさんはマサチューセッツ州議会で証言を行った。その場で彼女は、脳卒中の疑いがある患者を救急隊員が最寄りの病院ではなく、脳卒中治療認定病院に直接搬送できるようにすることや、医師の経口避妊薬処方に際して第V因子ライデンの検査を義務付けることを訴えた。それらの法案はまだ可決されていないが、彼女はこの問題に関する人々の認識を高めることができたと自負している。 Diazさんの体験談は、脳卒中は年齢を問わず誰にでも起こり得るという事実を、人々に伝える際にも役立つ。Rostさんによると、脳卒中の症状に関する長年にわたる啓発活動にもかかわらず、顔のゆがみ、ろれつが回らない、脱力、しびれ、めまい、視力低下、歩行困難、話したい言葉が出てこないといった症状が脳卒中によるものと認識していない人が、依然として少なくないという。そして、「いつもと違うこと、何だかおかしいと感じることがあれば、ためらわずに助けを求めてほしい」とアドバイスする。 Diazさんは、現在46歳だ。脳卒中が自分の人生のターニングポイントだったと感じている。彼女は今、食べるものや健康により気を配るようになった。そして「人々の見た目は、その人の真の健康状態とは何の関係もない」と、過信に注意を呼び掛けている。[2023年6月9日/American Heart Association] Copyright is owned or held by the American Heart Association, Inc., and all rights are reserved. If you have questions or comments about this story, please email editor@heart.org.利用規定はこちら

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注射による猫の避妊治療、小規模研究で100%の効果を示す

 猫の個体数を抑制するための手段としては、生殖腺を外科的に摘出する不妊手術が主流であるが、より効果が高く安全な避妊法として、1回の注射で済む避妊治療が有望であることを示した小規模研究の結果が報告された。米シンシナティ動植物園の動物研究部長であるWilliam Swanson氏らによる研究で、「Nature Communications」に6月6日掲載された。 Swanson氏は、「1回の注射で生涯を通して不妊になる可能性のある避妊薬は、不妊手術という現在の標準的な治療法に比べて多くの利点がある」と述べる。現在、雄猫に対しては、全身麻酔で精巣(睾丸)を切除する去勢手術、雌猫に対しては、卵巣のみを摘出するか、卵巣と子宮の双方を摘出する避妊手術が行われている。このような不妊手術は、猫の繁殖を抑制する上では有効だが、デメリットもある。 例えば、「手術には、専門的な器具や医療用品、獣医の専門的な技術、麻酔薬や鎮痛薬が必要であり、術後のケアも必要だ」とSwanson氏は指摘する。また、保護された猫の数が多くなければ、不妊手術は頭数コントロールのための効果的な手段となり得るが、「世界中の何億匹もいる野良猫の繁殖をコントロールするには十分な手段ではない」と同氏は強調する。 この研究論文の背景情報によると、世界中で猫(イエネコ;ネコ科の動物のうちで家畜化された種類)の数は6億匹に上るが、このうちペットとして飼われているのはわずか20%に過ぎず、残りの80%は野良猫と推定されている。野良猫の住環境や健康状態は最適とはいえず、また、猫による野生動物の捕食が生態系に悪影響を及ぼすことなどが指摘されてはいるものの、保護施設に収容された猫を安楽死させることには倫理的な問題がつきまとう、と研究グループは指摘する。 AMH(抗ミュラー管ホルモン)は、女性では卵巣で、男性では精巣で生成される非ステロイド系ホルモンであり、女性では卵巣の中に残っている卵子の数を予測するための指標として用いられている。研究論文の上席著者である米マサチューセッツ総合病院小児外科研究所のDavid Pepin氏は、過去の研究で、女性のAMHレベルを一定の閾値以上に上げると卵胞の成長が抑制され、排卵と妊娠を防止できることを発見している。 今回の研究では、雌猫のAMHレベルを上げることにより、同様の効果が得られるのかどうかが検討された。Swanson氏らは、性的に成熟した雌猫9匹のうちの6匹に、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターによりAMH遺伝子を導入する遺伝子治療を、1回の筋肉内注射で行った。この注射により、通常は卵巣でしか産生されないAMHが筋細胞内でも産生されるようになり、体内のAMHレベルが通常の100倍に上昇するのだという。残りの3匹は、このような遺伝子治療を行わない対照群とした。 治療後8カ月と20カ月の時点で、これら9匹の雌猫と1匹の雄猫を1日8時間ずつ週に5日、4カ月にわたって共に過ごさせる実験を2度行った。その結果、2年間の追跡期間中に遺伝子治療を受けた6匹のうちの2匹が雄猫と交尾したが、妊娠した猫はいなかった。これに対して、対照群の3匹は、いずれも雄猫と交尾して妊娠したことが明らかになった。この遺伝子治療による副作用は観察されなかった。 米国動物虐待防止協会(ASPCA)のシェルター医療担当シニアディレクターであるLauren Overman氏は、「米国では、毎年300万匹以上の猫が施設に保護されるが、これらの猫に飼い主を見つけることにしばしば苦労する」と述べる。同氏は、「不妊手術はこの問題の解決に役立つが、猫用の避妊薬の開発に関するこの研究結果は、特に野良猫や従来の不妊手術を行うための資源がない地域の猫に対する不妊治療を増やす可能性があり、その結果、野良猫の数が減少するかもしれない」と期待を寄せる。 この治療法はまだ臨床で使用できる段階にはない。Swanson氏は、目下、遺伝子治療を行った猫のその後の経過を追跡調査するとともに、別の臨床試験の実施も計画しているところだという。同氏は「この治療法がいつ利用できるようになるかの予測は難しいが、まだ何年も先のことになるだろう」と述べている。

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第147回 健康長寿の自治体は、男女とも川崎市麻生区、ワースト自治体は大阪市西成区/厚労省

<先週の動き>1.健康長寿の自治体は、男女とも川崎市麻生区、ワースト自治体は大阪市西成区/厚労省2.改正健康保険法が成立、出産育児一時金の財源のため75歳以上の保険料の引き上げへ/国会3.全世代型社会保障関連法が成立、「かかりつけ医機能」報告制度を創設へ/国会4.大都市など外来医師多数区域での新規開業規制を/財務省5.緊急避妊薬の市販化、パブリックコメントは圧倒的多数が賛成/厚労省6.財政制度等審議会で医薬品の保険給付範囲の早急な見直しを提案/財務省1.健康長寿の自治体は、男女とも川崎市麻生区、ワースト自治体は大阪市西成区/厚労省厚生労働省は、令和2年に行われた国勢調査の結果を基に市区町村別にみた平均寿命を発表した。それによると、男女ともに最も寿命が短いのは大阪市西成区で、男性が73.2歳、女性が84.9歳。一方、最も長寿な市区町村は男女ともに川崎市麻生区で、男性の寿命は84.0歳、女性の寿命は89.2歳だった。厚労省は、市区町村ごとの平均寿命の差は、生活習慣や健康への意識などの要因によるものとしている。日本人の平均寿命は全国平均で男性が81.49歳、女性が87.60歳で、男女の平均寿命の差は6.1歳。この調査結果を基に、住民の健康増進に役立てることが期待されている。(参考)市区町村別にみた平均寿命 (厚労省)令和2年市区町村別生命表の概況(同)平均寿命 川崎 麻生区が男女とも最長 厚労省調査(NHK)最も長寿な市区町村、男女とも川崎市麻生区…ワーストの区とは10歳の差(読売新聞)市区町村別ニッポンの平均寿命 男性の“短命”は1~3位とも大阪市 厚労省の最新調査(MBS)2.改正健康保険法が成立、出産育児一時金の財源のため75歳以上の保険料の引き上げへ/国会後期高齢者医療制度の保険料の上限引き上げを含む改正健康保険法が、5月12日の参議院本会議で自民党、公明党などの賛成多数で可決、成立した。社会保障の持続性を高める「全世代型社会保障」への改革の一環として、2024年度から所得のある75歳以上の人の医療保険料を段階的に引き上げ、現役世代の負担増を抑えつつ、出産育児一時金の増額に充てる財源とする。法案によれば、年金収入が年153万円を超える約4割の後期高齢者を対象に、2024年度から保険料の上限を73万円、2025年度には80万円に引き上げる予定。厚生労働省の試算では、高齢者の1人当たりの保険料は年平均でおよそ5千円増え、25年度は8万7,200円となる見通し。また、自営業者などが加入する国民健康保険では、出産前後の4ヵ月間の保険料を免除する措置も創設される。(参考)75歳以上の公的医療保険料、段階的引き上げ…出産一時金増額で健康保険法改正(読売新聞)改正健保法が成立 75歳医療保険料引き上げ 出産一時金財源にも充当(産経新聞)75歳以上、保険料5000円増 改正健保法成立 対象4割 財政の持続性 懸念なお(日経新聞)3.全世代型社会保障関連法が成立、「かかりつけ医機能」報告制度を創設へ/国会5月12日に参議院本会議で改正医療法を含む、全世代型社会保障関連法が賛成多数で可決、成立した。これによって「かかりつけ医機能」の法定化と報告制度の創設が決まった。改正医療法では、「かかりつけ医機能」を「身近な地域における日常的な診療、疾病の予防のための措置その他の医療の提供を行う機能」と定義している。今後、政府は報告制度について検討を行い、今年の夏までに今後の具体的な情報提供項目のあり方や情報提供についてまとめる。2025年4月施行後、診療所や病院は「かかりつけ医機能」として休日・夜間の対応、介護サービスとの連携などについて都道府県に届け出ることになる。都道府県は医療機関の体制を確認し、患者が適切な選択をするための情報を提供するとともに、地域の「かかりつけ医機能」の向上を協議し、医療計画や介護保険事業計画に反映させることを目指す。また、2007年に創設された「医療機能情報提供制度」は、2024年度に全国統一のシステムに切り替えられる予定。(参考)全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の改正案(厚労省)「かかりつけ医機能」を法定化、報告制度創設へ 全世代型社会保障関連法が成立(CB news)4.大都市など外来医師多数区域での新規開業規制を/財務省財務省は、財務大臣の諮問機関の財政制度等審議会財政制度分科会を5月11日に開催し、この中で今後の医師の需給見込みについて議論を行った。厚生労働省の将来推計によれば、2029年頃にマクロでは医師需給が均衡し、その後は医師の供給過剰となることが見込まれており、現状のままでは、大都市部において医師や診療所数が過剰となり、地方はそれらが過少となる傾向が続く。厚労省は「外来医師多数区域」における取組みとして、2020年度の「外来医療計画」に基づくガイドラインで「外来医師多数区域」において新規開業を希望する者に対しては、不足する医療機能を担うように要請しているが、一部の都道府県では、そもそも要請を行っておらず、また、要請を行っても、新規開業者に求める医療機能が不明瞭なケースもある。厚労省の調査によれば、要請に従っている新規開業者は7割程度と十分ではない。今後、わが国でも、地域ごとに病院・診療所間の役割分担を明確にしつつ、必要な医療人材を集中・確保していくことが求められる中で、たとえば診療所の新規開設についても、国外の例を参考にもう一歩踏み込んだ対応が必要などの意見が出された。日本医師会は「外来医療計画」について2019年に、外来医療計画は開業を制限するものではないことを確認している。現在、厚労省は第8次医療計画の策定を進めており、来年度から各都道府県に対して、医師の偏在対策を求めていくとみられる。(参考)財政制度等審議 財政制度分科会 財政各論(3):こども・高齢化等[※74頁目より](財務省)財務省、診療所の新規開業規制に言及「一歩踏み込んだ対応必要ではないか」(CB news)2024年度から強力に「医師偏在解消」を推進!地域の「すべての開業医」に夜間・休日対応など要請-厚労省(Gem Med)外来医療計画について(日本医師会)医師確保計画策定ガイドライン~第8次(前期)~(厚労省)5.緊急避妊薬の市販化、パブリックコメントは圧倒的多数が賛成/厚労省厚生労働省は、5月12日に「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」を開催し、医師の処方箋なしで購入できる緊急避妊薬(モーニングアフターピル)の市販化について、約4万6千件のパブリックコメントが寄せられ、およそ99%が賛成であったことを明らかにした。しかし、検討会議では最終報告書がまとまらず、議論が継続されることとなった。現在、緊急避妊薬は医師の処方箋が必要で、診療可能な医療機関やオンライン診療の医師一覧が厚労省のウェブサイトに掲載されているが、休日や夜間に手に入りにくいという課題も存在する。これまで緊急避妊薬については、処方箋が不要な市販薬に変更する意見が取り上げられてきたが、厚労省の専門家会議では、市販化は女性の権利に関わる問題であり、アクセス向上の面でも良い方法であるとの認識が共有されていた。パブリックコメントでは、4万5,314件が賛成であり、反対は412件であった。賛成意見の中には、未成年が避妊薬を手に入れやすくなることへの懸念や、性犯罪被害者のサポートセンターの存在を広く知らせる必要性などが挙げられた。厚労省の専門家会議は、緊急避妊薬に関心の高い女性の存在を認識し、次回までに最終報告書をまとめることを決定したほか、一部薬局や地域での試験的な導入を検討する。今後、課題などを整理した後、製薬会社から緊急避妊薬のOTC化の申請があれば、承認するかどうか別の会議で審議する。(参考)第24回 医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議(厚労省)緊急避妊薬「市販化を」 異例のパブコメ4万6千件、賛成の声多く(朝日新聞)緊急避妊薬スイッチOTC化前の試験運用検討へ パブリックコメント踏まえ評価会議が方向性(CB news)6.財政制度等審議会で医薬品の保険給付範囲の早急な見直しを提案/財務省財務省は、5月11日に開催された財政制度等審議会において、医療・介護の給付費用が過去20年で大幅に増加しており、医療・介護の給付費用の効率化が必要として、医薬品の保険給付範囲の見直しを求めた。この中で、日本の医療保険制度は、患者側が受診コストを意識しづらく、医療機関側は患者数・診療行為数が増えるほど収入が増える構造である。わが国の保健医療支出GDP比はOECDで5番目に高く、政府支出に占める公的保健医療支出の割合はOECDで2番目に高い状況にある。近年、医薬品に対する給付費用が経済成長率以上に伸びており、さらに高齢化の進展に伴い、さらなる薬剤費の増加も見込まれている。医療・介護の報酬改定で制度改正を行っているが、今後も給付費用の抑制に取り組む必要がある。また、画期的な新薬を含め高額医薬品の収載が増えており、今後も保険財政への影響が大きい医薬品が出てくることも予想され、保険給付について今のままでは保険料や国庫負担の増大が避けられない現状であるとした。すでに欧米諸国では、高額な医薬品については、費用対効果をみて保険対象とするか判断する、医薬品の有用性が低いものは自己負担を増やす、あるいは、薬剤費の一定額までは自己負担とする方策をとっており、わが国でも早急な対応が必要として、新しい枠組みを求めた。政府はこれらの提言を基に、令和5年度の「骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)」を今年の夏までに決定して、岸田内閣が取り組む課題とするとみられる。(参考)財務省主計局 財政審に「薬剤費の一定額までは自己負担」など保険給付範囲の早急な見直しを正式に提案(ミクスオンライン)財政制度等審議会 財政制度分科会 財政各論(3):こども・高齢化等[※64頁目より](財務省)

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第145回 5類移行でコロナ対策本部廃止、公費負担による無料検査などは中止へ/政府

<先週の動き>1.5類移行でコロナ対策本部廃止、公費負担による無料検査などは中止へ/政府2.コロナ後遺症の診療報酬、5月8日から特定疾患療養管理料を加算へ/厚労省3.緊急避妊薬の市販化、パブコメで97%が賛成/厚労省4.進まぬ電子処方箋、普及に向け、導入拡大を加速化/厚労省5.少子化対策の財源の議論開始、社会保険料や税で/財務省6.認知症患者の遺族が寄付金3億円をめぐって金沢医科大学を提訴/石川1.5類移行でコロナ対策本部廃止、公費負担による無料検査などは中止へ/政府政府は、新型コロナウイルス感染の感染症法での位置付けが5月8日に季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行するのに伴い、新型コロナウイルス感染症対策本部を同日に廃止することを閣議決定した。5類移行後の公費負担での対応が大きく変わり、新型コロナウイルスのPCR検査や抗原検査を病院や診療所で行う場合も、検査キットを使用する場合も自己負担となる。また、各自治体による検査キット配布事業も終了となる。ただし、医療機関や介護施設などで陽性患者が発生した場合、医療スタッフなどへの検査を都道府県が実施する場合のみ行政検査として無料で実施される。そのほか、外来診療も従来は公費負担で行われていたものが、インフルエンザとほぼ同じ程度の自己負担が必要となり、入院時の医療費も同様に保険診療となるが、9月末までは、高額療養費制度の自己負担限度額から2万円を減額する措置が講じられる。5月8日以降は、医療機関では「コロナ患者である」ことだけを理由とした診療拒否は「応招義務違反」となり、自院での対応が困難な場合には他の「対応可能な医療機関に対応を依頼する」あるいは「患者に対して対応可能な医療機関を伝える」ことを行うことが必要となる。(参考)政府 「5類」移行に伴い新型コロナ対策本部の廃止を決定(NHK)コロナ5類 感染した時は? 医療費負担 外出 療養支援 相談 証明書(同)コロナ「5類」正式決定 5月8日からどうなる?(同)「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて」等の一部訂正について(厚労省)5月8日以降、「コロナ感染のみ」を理由とした診療拒否は不可、自院対応困難な際は「対応可能医療機関を患者に伝える」等の配慮を-厚労省(Gem Med) 2.コロナ後遺症の診療報酬、5月8日から特定疾患療養管理料を加算へ/厚労省厚生労働省は新型コロナウイルスに感染後のいわゆる「後遺症」について患者を診た医療機関の診療報酬を加算することを各都道府県に対して通知した。新型コロナ感染症の位置付けが「5類」に移行する5月8日から開始となる。加算対象は、新型コロナ感染と診断された3ヵ月目以降も後遺症が2ヵ月以上続く患者に対して、診療の手引きを参考にした診療に対して3ヵ月に1度、特定疾患療養管理料147点を加算する。支払いを受けるには、都道府県が公表している罹患後症状に悩む方の診療を行っている医療機関のリストに掲載されている必要がある。期限は令和6年3月31日。(参考)味覚・記憶障害など1年以上続くこともある「コロナ後遺症」、診療報酬を加算(読売新聞)コロナ後遺症の診療、3か月ごと147点 報酬特例で評価へ、来年3月まで(CB news)「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて」にかかる疑義解釈資料の送付について[その2](厚労省)「コロナ後遺症の専門医療機関」を各都道府県で本年(2023年)4月28日までに選定し、公表せよ-厚労省(Gem Med)3.緊急避妊薬の市販化、パブコメで97%が賛成/厚労省厚生労働省は「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」で緊急避妊薬を市販薬とするスイッチOTC化について検討を重ねてきた。去年12月から今年の1月にかけて厚生労働省が実施したパブリックコメントの結果、市販化に賛成の意見が約4万6,000件、反対の意見が約300件と、全体の約97%が賛成する内容だった。厚労省は5年前にも同様の検討を行ったが、このときは転売の可能性や不十分な性教育などを理由に「時期尚早」として見送られた経緯がある。しかし、2019年にはオンライン処方も可能になるなど環境の変化もあり、今後、同省は専門家を交えた検討会議の議論をもとに、結論を出す見込み。(参考)緊急避妊薬OTC化の議論、5月以降に 厚労省、パブコメ整理で大きくずれ込む(日刊薬業)緊急避妊薬の市販化 パブコメに4万6300件の意見 97%が賛成(毎日新聞)第22回 医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議(厚労省)4.進まぬ電子処方箋、普及に向け、導入拡大を加速化/厚労省厚生労働省は、4月28日に第2回電子処方箋推進協議会を開催した。この中で電子処方箋の導入状況は、4月23日時点で全国3,352施設で運用開始されていた。内訳は病院9、医科診療所250、歯科診療11、薬局3,082。同日公開された公的病院への導入計画に係る調査結果では、回答した施設のうち、令和5年度中に電子処方箋の導入予定の病院が214施設だった。寄せられた意見の中には、オンライン資格確認などシステム利用が伸び悩んでおり、導入後に電子処方箋の利用が伸びるのか疑問といった声が上げられている。電子処方箋導入施設の面的拡大を重点的に行うため、導入意欲が特に高く、稼働中または近日中に稼働予定の病院「気仙沼市立本吉病院」、「静岡市立静岡病院」、「公立松任石川中央病院」、「公立西知多総合病院」、「徳島市民病院」、「長崎みなとメディカルセンター」を中心に周辺施設の導入拡大を加速化する方針を固めた。(参考)第2回 電子処方箋推進協議会 資料(厚労省)電子処方箋「面的拡大」、導入意欲高い病院など中心に 厚労省(CB news)【電子処方箋】“面的拡大”、6病院を列挙/リフィル機能など先行検証/「気仙沼市立本吉病院」「静岡市立静岡病院」、「公立松任石川中央病院」、「公立西知多総合病院」、「徳島市民病院」、「長崎みなとメディカルセンター」(ドラビズ on-line)5.少子化対策の財源の議論開始、社会保険料や税で/財務省財務省は4月28日に財政制度等審議会を開催、少子化対策の議論に着手した。わが国でも、最終学歴が大卒以上の女性の出生こども数は近年増加しており、女性が出産・育児でキャリアを中断することに伴う機会費用が相当な額にのぼっていることが示唆されている。このため女性の出産支援がさらに必要であり、現時点では少子化対策予算として令和5年度の予算では国費6.3兆円が計上されているが、諸外国と比較すると、現金給付の割合が低いとの指摘もあり、財源について「企業を含む社会・経済の参加者全員が広く負担する新たな枠組みの検討が必要」と指摘がなされた。出席した委員からは社会保険料や税の組み合わせを財源とする意見が出た。この前日、内閣府は第2回のこども未来戦略会議を開催しており、財源について、社会保険料引き上げの案が浮上しているが、経済界や労働団体からは消費税を含む幅広い税財源の検討を求める声が出されていた。(参考)少子化財源、消費税含め議論を 労使、現役負担増に懸念-こども会議(時事通信)少子化財源、財制審で議論開始 「社会保険料や税で」(日経新聞)財政制度等審議会 財政制度分科会 財政各論(2)(財務省)財政制度等審議会 財政制度分科会 財政各論(3)(同)第2回 こども未来戦略会議(内閣府)6.認知症患者の遺族が寄付金3億円をめぐって金沢医科大学を提訴/石川認知症の疑いがある高齢患者の寄付をめぐって、3億円の寄付を患者にさせたのは無効だとして、患者の遺族が大学病院と当時の主治医を相手取って2億4,000万円余りの損害賠償請求を求める裁判を金沢地裁に起こした。訴えられたのは金沢医大病院。遺族によれば、患者は一昨年の1月に同院に入院し、認知機能の低下が指摘され検査結果で大脳の萎縮などが確認された。同年5月に大学創立50周年の募金に対して3億円を寄付し、同年10月に90歳で亡くなった。遺族がこの寄付を知ったのは死亡後。遺族らは「家族に確認することなく、認知機能の低下に乗じて非常識な金額を寄付させた」と主張し、金沢医科大学と当時の病院長で主治医だった男性に対し2億4,000万円余りの賠償を求めており、大学側は「寄付は正当な手続きをして受け入れている。今後、訴状内容を確認してから対応したい」としている。(参考)父親の3億円寄付「異常で不当」 遺族が金沢医大を提訴(産経新聞)認知症疑い患者の3億円寄付、原告代理人「寄付が原因で借金残る」「極めて異常な額」(読売新聞)認知症なのに「3億円を寄付させた」 遺族が金沢医大病院側を提訴(朝日新聞)認知機能低下の患者に巨額の寄付持ち掛け 遺族らが金沢医科大学を提訴(日テレ)

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